「兼業・副業」の実務対応について
平成30年1月に改正された、厚生労働省は、モデル就業規則では、「労働者は、勤務時間外において、他の会社の業務に従事することができる。」と規定し、また、「兼業・副業に関するガイドライン」においても、兼業・副業を、原則として認める方向に舵を切りました。
労働判例においても、次のような判例があります。
判例A 「労働者は、雇用契約の締結によって使用者に対し1日のうち一定の限られた勤務時間のみ労務提供の義務を負担し、その義務の履行過程においてのみ使用者の支配に服するが、雇用契約及びこれに基づく労務の提供を離れて、使用者の一般的な支配に服するものではない。」
判例B 「・・・就業規則で兼業を全面的に禁止することは、特別な場合を除き、合理性を欠く」
- 副業・兼業を認めた場合に、一番管理が難しい「労働時間の通算」の問題を取り上げます。労働時間の通算とは、例えば、労働者山田太郎さんと、X社(他社=先に労働者と契約した会社)で8時から17時まで、8時間働いた後、Y社(自社=後から労働者と契約した会社)で2時間兼業を行うと、この2時間は、時間外労働になることです。Y社が山田太郎さんと、時給1200円で契約した場合、残業代金300円(1,200円×0.25倍=300円)も支払わなければなりません。そのため、2時間の残業で3,000円(残業代600円含む)の支払いが必要になります。
- 山田太郎さんが、X社で月曜日から金曜日まで、残業なしで40時間働き、Y社が土曜日に8時間労働させた場合も同じです。時給1,200円の場合、12,000円(1,200円×1.25倍×8時間)の支払いが必要になります。 なぜ、労働時間を通算する必要があるのかと言うと、労働基準法には、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定は通算する。」と規定されているからです。
- それでは、山田太郎さんとの労働契約をY社(自社)が先で、X社(他社)が後なら、労働時間の通算の問題は生じないかというと「時間外・休日労働の絶対的上限規制」(単月100時間未満・複数月80時間以内の時間外労働)については、通算されます。例えば、Y社(自社)で残業なしで、月間160時間働き、X社(他社)で残業なしで160時間働いた結果、合計すると、160時間の残業が発生することになり、その責任(36協定違反及び過重労働)は、Y社もX社も負担することになります。
「労働時間の通算」は、次の場合には、適用されません。理由は、労働基準法が適用されないからです。①山田太郎さんが、個人事業主(フリーランス)の場合 ②会社経営者の場合 ③会社の管理監督者の場合 ④農林水産業に従事する場合
当事務所が就業規則を作る場合は、兼業・副業を原則禁止、例外許可としていますが、もはや、副業・兼業を完全に禁止することはできません。どのような場合に禁止するのか、どのような場合に認めるのか等、労働条件を整備しましょう。

