「1か月単位の変形労働時間制」と「シフト勤務」
「1か月単位の変形労働時間制(以下、「1か月変形」という。)ほど、使いやすい制度はない。」と私は思うのですが、「1か月変形」を「シフト勤務」で運用している会社の場合、規定と運用が失敗すると、変形労働時間性を否認され、原理原則とおりの労働時間(1日8時間・1週間40時間)で計算した割増賃金を支払わなくなる可能性があります。
「1か月変形」を「シフト勤務」を組む可能性がある業種は、医業・介護・建設・運送・タクシー業・警備会社等で、24時間・365日営業の業種が多いです。就業規則において、①労働日及び所定労働時間②始業・終業の時刻②勤務の組み合わせ方④シフト表の作成手続き⑤周知方法を定め、シフト表は変形期間の開始前に定める必要があります。
会社側が負けている裁判例と通達を紹介します。
1. 日本マクドナルド事件(名古屋地裁令4・10.26)会社の就業規則には、始業・終業時刻を定めた4種類の勤務シフトを規定していたところ、A店は、独自のシフト表を作成したことから、A店の元社員が「1か月変形」の無効を訴え、未払い残業代の請求をしたものです。判決は、次の通達を引用し、「就業規則で定めていない勤務シフト表は、通達の要件を満たさない。」と判示した。
2. ダイレックス事件(長崎地裁令3.2.26)D社のシフト表は、1週平均40時間を超えるシフト表のため、「1か月変形」は認められない。D社は、あらかじめ月間法定時間に30時間分の残業時間が加算されたシフト表を作成していたが、「1週平均40時間以内のシフト表でないと、変形労働時間制の要件を満たさない。」と判示した。
3. イースタンエアポート事件(東京地裁令2.6.25)「1か月変形」が否定された場合、1日8時間を超える労働は時間外労働になります。「月給制の場合、時間外労働を行っても、1.0倍の部分は支払っているのだから、0.25倍の時間外労働割増賃金を支払えば良い。」とI社は主張しましたが、裁判所は、1.25倍の割増賃金を支払うように命じました。

